「……な?死なないだろ?」
ケツの半分もいかない川面を
ばしゃばしゃ叩いて、オレは
泣き顔の天音に無事をアピールする。

「こんなトコじゃ死ねないんだよ。
 ガキの頃のオレは死んでないんだ。
 だからお前は、オレじゃない。
 …オレのせいで迷子になっちゃった、
 女の子のユキちゃんだ」 

「そっか……オレはお前じゃないんだ。
 ……ありがとうな」
「え……?どうして……」

「オレ、ずっと自分が何者だか
 分からないのが、苦しくて……
 今まで『お前』を借りてたんだ。
 まださ、女の子とか言われても
 どうしていいかわかんねえけど……
 お前は、お前に返すよ」

「ユキちゃ……
 へぶっっっ」
「言っときますが、徹頭徹尾
 悪いのはテメエ様ですからね」
「手術したってチンコが本物に
 なるわけじゃねーんだろ?」

−と、いうわけで。
天音は男子の制服をやめたのだった。
急に「お嬢様」に戻れるはずも
ないけど、とりあえずは無理をして
かりものの男子学生を続けなくても
いいのだ。
オレの知ってるおとなしくてリボンの似合う
小さな女の子はもういない。
だけど、一番好きな女の子が
ユキちゃんだってことにかわりはないんだ。

今はまだ男友達としかオレを見て
くれてないけど、いつか必ずっ!

 きょうもオレは執事さんにしばかれつつ
天音と学校へ向かうのだった。 

まえ     もどる 

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